KAAT×東京デスロック『外地の三人姉妹』


2020年12月12日[土]~20日[日] KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

[当日パンフレットより]
『外地の三人姉妹』は、前作の『가모메 カルメギ』に続いて、ロシアの劇作家アントン・チェーホフが約120年前に書いた戯曲を、日本統治下の朝鮮半島に置き換えた新作です。「モスクワへ」と叫ぶ原作戯曲のセリフは、この戯曲では「東京へ」となり、故郷である日本列島から離れ、外地で暮らす日本人を描いています。
 日本語と日本文化をある程度知っているとはいえ、韓国人の劇作家である私に、日本人と日本の歴史に真正面から向き合うような今回の仕事は、大きな挑戦であり、難しい課題でした。しかし、今日(こんにち)の日本の方々にとって、このような外側からの見方や、ほかの国との歴史を喚び起こす物語は、きっと有効であろうと信じて、翻訳家の石川樹里さんと皆様に助けていただきながら脱稿まで至りました。多田淳之介さんの演出によって、チェーホフの原作戯曲の世界、日韓や世界の歴史、今の日本の政治や日韓関係まで、多重のレイヤーが重なって見えてくる魔法のような舞台になることを楽しみにしています。
劇作家
ソン・ギウン


 新型コロナによる入国制限により一時は日本在住者のみでの上演に傾いていましたが、ギリギリのタイミングでビザが緩和され韓国から二人の俳優を迎えることができました。来日してくれたお二人には敬意と感謝しかありません。 そして作家のソン・ギウンさん、ドラマトゥルクのイ・ホンイさんにはリモートで稽古や打ち合わせに参加してもらい、改めて国や文化をつなぎ協働する意義を感じています。
 演劇は以前の状況に戻ってからで良いのでは? という意見もあります。では以前のように戻るのはいつでしょう?1年後? 10年後? 昔に戻ったらきっと上手くいく、今を我慢すれば未来は上手くいく、まるで三人姉妹たちのようです。芸術はどんなに苦しくても今を生きぬいていく(できれば楽しく) ためにあるはずです。不自由で、息苦しくて、生身のふれあいが減り、人間らしい生き方に悩みがちな今だからこそ、生身の人間にふれ、人間について考える時間、演劇が大切なのではないでしょうか。私たちはそのために作品を作り続けます。
 今回はKAAT神奈川芸術劇場との共同主催により、東京デスロックとソン・ギウンさんが主宰する第12言語演劇スタジオが10年以上続けてきた日韓コラボレーションを更に進める作品となりました。日韓の歴史を扱いながら一方的な解釈に回収されない日韓双方の観客の視点に耐えうる作品を目指して(正直難しいです)、原作への新たな発見や日韓の歴史を知るきっかけにもなってくれたら嬉しいです。日韓は本当に鏡のようで、相手を見ることで自分のこともよくわかる、そして決して向こう側から見ることはできない。ただその視点を想像することはできます。日韓双方からの視点や登場人物それぞれの視点、自分とは違う他者を想像することへの希望と、想像のつかないことへの絶望にも寄り添ってもらえたら嬉しいです。
 最後に、この公演の実現のためにあらゆる尽力をしてくれたKAAT神奈川芸術劇場の皆様に衷心より敬意と感謝を申し上げます。

東京デスロック主宰
多田淳之介


原作:アントン・チェーホフ『三人姉妹』
翻案・脚本:ソン・ギウン
演出:多田淳之介

ドラマトゥルク:イ・ホンイ
翻訳:石川樹里

出演: 
伊東沙保 李そじん 亀島一徳 原田つむぎ アン・タジョン(안다정) 夏目慎也
高橋ひろし 大竹直 田中佑弥 波佐谷聡 松﨑義邦
イ・ソンウォン(이성원) 佐山和泉 鄭亜美

美術:乘峯雅寛 照明:岩城保 音響:星野大輔 衣裳:阿部朱美 ヘアメイク:国府田圭 演出助手:相田剛志 通訳・字幕製作:藤本春美
方言指導:桂吉坊(大阪弁) 佐藤誠(津軽弁) 田中美希恵(長州弁)
プロダクション・マネージャー:佐藤大祐 山田貴大 舞台監督:橋本加奈子 小金井伸一 演出部:横川奈保子 照明オペレート:上山真輝 字幕操作:大島智恵 
衣裳部:木下明美 柿野彩 寺岡寛恵 藤林さくら 衣裳協力:東京衣裳株式会社 世田谷パブリックシアター技術部 大道具:美術工房拓人 C-COM 小道具:高津装飾美術
宣伝美術:畑ユリエ
制作:林有布子 制作助手:本郷麻衣 広報:森明睎子 菅原渚 佐藤想子 中嶋幸 営業:大沢清 票券:東妙成巳 プロデューサー:澤藤歩 服部悦子
事業部長:堀内真人

制作協力:第12言語演劇スタジオ
協力:(株)オフィスPSC 文学座 レトル
映像提供:国際日本文化研究センター/資料所蔵 山本俊介氏
助成:芸術文化振興基金 公益財団法人日韓文化交流基金

企画製作・主催:KAAT神奈川芸術劇場 一般社団法人unlock /東京デスロック




©宮川舞子



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