東京デスロック + 第12言語演劇スタジオ『가모메 カルメギ』



《神奈川公演》2018年6月30日(土)~7月8日(日)KAAT神奈川芸術劇場
《三重公演》2018年7月13日(金)~15日(日)三重県文化会館
《兵庫公演》2018年7月20日(金)~22日(日)AI・HALL 伊丹市立演劇ホール
《埼玉公演》2018年7月27日(金)~28日(土)富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ

[当日パンフレットより]
アントン・チェーホフの戯曲を日本占領下の朝鮮を舞台に翻案する試みは、韓国演劇界でいくつかの前例がありました。しかし、私としては、たとえば『三人姉妹』の有名な台詞、「モスクワへ!」を「京城(ソウル)へ!」に変えるだけではどこか物足りない物語になってしまうと感じました。それで、チェーホフの『かもめ』に登場するモスクワから来た作家、トリゴーリンを東京から来た日本人の作家に置き換える翻案を考えました。
朝鮮語(韓国語)と日本語が同時に話される二重言語の演劇、すなわち韓国の俳優と日本の俳優が一緒に登場するその一筋縄ではいかない夢が実現されたのが、『가모메 カルメギ』です。時代考証を細かく詰め込んだ、まるで時代劇のような私の脚色台本『가모메 カルメギ』に、私と長年のつきあいである演出家・多田淳之介は、現代化させ現前させる演出を施しました。
4年前、『가모메 カルメギ』をもって初めて日本の観客と出会い、私はこの1930年代の朝鮮半島の物語が、現在の日本の方々にとって「今の自分自身」を照らし合わせる鏡になることに驚きました。
それから4年、その間、韓国社会には想像と予測を超えるような出来事が続きました。
もう希望と興奮でウキウキしていても良いはずですが、私はかえって無力感と憂鬱さを感じています。まるで、目の前に霞がかかっているようなぼんやりした視野で、歪んだ世界の実像を、歴史の動きを読み取れていなかったからです。時代錯誤な政権が私達の芸術を白眼視し弾圧していたことも、私はまさか、まさかなどと言いながら、ろくにわかっていなかったのです。
私達の演劇『가모메 カルメギ』の中でも、1936年から2、3年の歳月が流れて行きます。歴史的に非常に重要であったその時間の中で、この芝居の登場人物達は無力です。その鈍さ、勇気のなさの結果は、酷いものでした。そのような歴史を二度と繰り返さないことを願っています。どうか私達に慧眼と勇気を!そうしてこの芝居の可哀想な登場人物達のように自滅してしまわないことを!
第12 言語演劇スタジオ代表 ソン・ギウン



10年前の2008年4月、ソウルで開催されたアジアの演出家が韓国の俳優と作品を作るフェスティバルに参加し、ソウルでの初作品『ロミオとジュリエット』を上演しました。上演を終えた帰り道、昌慶宮の前でギウンさんと「私たちの世代の新しい
日韓コラボレーションの歴史を作りましょう」と約束し、翌2009年から東京デスロックと第12言語演劇スタジオのコラボレーションが始まりました。以降毎年作品を作り続け、その約束は2013年の『가모메 カルメギ』ソウル初演の第50回東亜
演劇賞3冠受賞、史上初の外国人演出家による正賞受賞をもって果たされたと言えるかもしれません。この『가모메 カルメギ』に出演している韓国人俳優の半分は、2008年の『ロミオとジュリエット』のオーディションで出会った俳優たちです。その後に第12言語演劇スタジオのメンバーになった俳優もいます。国境を超えて、10年、共に作品を作った回数は、東京デスロックのメンバーを除けば彼らとが一番多いでしょう。もしかしたら彼らとの不思議な関係の方が新しいコラボレーションの歴史なのかもしれません。
歴史、日韓を語る上で、今回の様な作品を作る上では避けては通れません。この作品の創作過程でも様々な困難がありました。ただ芸術は歴史問題を解決するためにあるわけではありませんし、私たちもそのつもりはありません。できれば扱いたくないのが本音です。演劇は自分自身や他者への想像力の為にあります。当時の朝鮮、日本への想像力、そして未来への想像力の為にこの作品が上演できたら嬉しいです。
日本初演からの4年。日韓の社会情勢は驚くほど変わりました。そして私たちは変わりません。これまでと同じ様にお互いを信頼し、尊重し、良き友として日本と韓国で生きていきます。歴史とは時間のつながりです。私たちは、私たちが歩んできた10年の歴史をもって1930年代からの日韓の歴史と対峙し、そしてこの上演を経て、これからの歴史を歩んでいきます。
作品を見てくれた方にとっても、昨日までは想像もしなかった新しい歴史が生まれることを願っています。
東京デスロック主宰 多田淳之介


原作: アントン・チェーホフ『かもめ』
脚本・演出協力:ソン・ギウン
演出:多田淳之介
出演:夏目慎也 佐山和泉 佐藤 誠 間野律子
ソン・ヨジン イ・ユンジェ クォン・テッキ オ・ミンジョン マ・ドゥヨン チェ・ソヨン チョン・スジ イ・ガンウク
※日韓二ヶ国語上演/日本語字幕付き

ラマトゥルク:イ・ホンイ 翻訳:石川樹里
照明:岩城 保 舞台美術:パク・サンボン 舞台美術コーディネーター:濱崎賢二 舞台監督:浦本佳亮 棚瀬巧 演出部:水澤桃花 音響:泉田雄太 衣裳:キム・ジヨン 衣裳管理:原田つむぎ 小道具:チャン・キョンスク メイク:ソク・ピルソン 演出助手:岩澤哲野 チェ・ヨンオゥン 通訳:キム・ジョンミン 日本語指導:カン・ユミ フライヤーデザイン:細川浩伸 制作:服部悦子 加藤仲葉(ままごと) 制作補佐:谷 陽歩(合同会社syuz'gen)[神奈川公演] 石川景子(青年団)[埼玉公演]
企画製作:東京デスロック 一般社団法人unlock
協力:青年団 (有)アゴラ企画 (有)レトル krei inc. (株)中野笑店 ままごと 舞台美術研究工房 六尺堂 至福団

共催:第12言語演劇スタジオ
助成:韓国文化芸術委員会

[神奈川公演]提携:KAAT 神奈川芸術劇場 主催:一般社団法人unlock 東京デスロック
助成:平成30 年度文化庁国際芸術交流支援事業 公益財団法人日韓文化交流基金
[三重公演]共催:レディオキューブFM 三重 主催:三重県文化会館〔指定管理者:(公財)三重県文化振興事業団〕
[兵庫公演]主催:公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団 伊丹市
[埼玉公演]主催:公益財団法人キラリ財団
助成:一般財団法人地域創造 文化庁文化芸術振興費補助金( 劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会





photo by bozzo



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