『ARE YOU HAPPY ???〜幸せ占う3本立て〜』


2017年9月30日[土]~10月14日[土] STスポット

『3人いる!』-当日パンフレットより-
台本を書くのをやめて演出だけをやるようになって10 年以上が経ちました。最後にまともに台本の形として書いたのが2006 年初演のこの『3 人いる!』です。
2012 年と2013 年に韓国語に翻訳して韓国の俳優たちとも上演しましたが、久しぶりに日本語で作ってみるとやはり初演当時のことを思い出します。
2006 年は今回再演する2 作品も含め「演劇を見直す演劇」というシリーズで3 作品を作りました。全編架空の言語で上演したり(青年団若手自主企画vol.27『別』)、配役を固定しなかったり(『3 人いる!』)、同じ物語を繰り返したり(『再生』)、今思えば若気の至りそのものですが、演劇はもっと面白い、ただそれだけで突っ走っていたように思います。
『3 人いる!』はタイトルからも容易に想像できますが、萩尾望都さんの『11 人いる!』にインスパイアされています。11 人で偽物探しをする話を果たして3 人でもできるのか。バカなことを考えたものです。このバカバカしさが全てとも言えます。
堅苦しく言えば、自分が自分であることは他者に認められないと証明できないのか、ということですが、やはりバカバカしさの方が勝っていると我ながら思います。SF ですから。
オリジナルは男性二人でしたが、今回の上演に向けて女性二人に改訂しました。謎解きパズルのような台本も販売してます。過去には高校生が文化祭で上演してくれたこともあります。テーブルと椅子三脚あればどこでも上演できるので、興味ある方はぜひお手に取ってみてください。
東京デスロックも気づけば15 年以上も活動していますが、相変わらず東京で公演しなかったり(少なくとも東京オリンピック終了まではやりません。)いい歳こいて大人気ないことを続けています。演劇はもっと面白い、だけで突っ走ることはさすがに今はありませんが、演劇で幸せに、演劇を幸せにということはこれからも考え続けていきます。
今回の3 本立ては” 幸せ占う3 本立て”。Are You Happy? と問われた時、今の私たちは、どう答えられるのか。演劇の色々な方法で「幸せ」にアプローチできればと思っています。『3 人いる!』がお気に召していただけたら、他の2 作品、『3 人いる!』その後の東京デスロックもご覧いただければ幸いです。

作・演出:多田淳之介
出演:李そじん 原田つむぎ 松﨑義邦

photo by bozzo


『再生』-当日パンフレットより-
『再生』を初演した2006 年くらいまでは、台本を書いて演出もする、いわゆる作・演出をしていました。劇団名の通り人が死ぬ話、人に死なれる話を書いていました。同時に演劇の構造についても色々な可能性に挑んでいる時期でもあり、『再生』はその両方が重なった作品です。『再生』も台本という形はないですが、この作品以降演出だけをするようになりました。『再生』は最後に「死」を扱った作品でもあり、結果的に初めて「生」を扱った作品で、劇団のターニングポイントとなった作品です。
以降、東京デスロックは俳優の身体を酷使しているように見える作品を作り始めます。身体の変化を利用して今ここにある「生」を舞台に乗せようとしてきました。その後は舞台上の俳優だけでは飽き足らず、今ここにいる観客との関係を含めた演劇の場を作品にしていきます。今回の3 本立てでは上演しませんが、観客と共に、今生きている私たちについて考える場づくりをしてきました。その辺りの片鱗は、今回の3 本の中では『ハッピーな日々』で垣間見えるかもしれません。なにしろ最新作ですから。
『再生』に話を戻すと、2011 年に『再/生』というこれまた紛らわしい作品を作りました。これは東日本大震災を経て、戻ることのない時間とそこにある身体、そして分断を描きたいと思い作った作品です。『再/生』は国内7箇所をツアーし、ツアー先のいくつか、ここ横浜では中野成樹+フランケンズ、京都ではKAIKA 劇団 会華*開可、青森では渡辺源四郎商店と『再生』現地版を作り『再/生』と二本立てで上演し、ソウルでも日韓俳優での『再生』を上演しました。現地版や日韓版の『再生』は選曲や会話の内容は違いますが、初演と同じく集団自殺を目論む若者たちの話でした。
その若者たちも、11 年経ち、今やすっかりアラフォーです。一回り以上歳の離れた若者たちと一緒に作り直した今回の東京デスロック版『再生』、また10 年後さらに次の世代とも一緒に作れたらいいなと思いますが、この作品を作らなくても済むのならそれが一番なのかもしれません。
どんなに理不尽な世の中でも人が生きて死んでいくことに光明を差してくれることが、芸術がずっと人と共にある理由の一つだと思います。11 年前、この作品に光明を見せてもらった気がしています。あれから11 年、私たちの今にも光明を見い出すことはできるでしょうか。
Yes,We are happy.

作・演出:多田淳之介
出演:夏目慎也 間野律子 伊東歌織 李そじん 原田つむぎ 松﨑義邦 海津 忠(青年団)

photo by bozzo


『ハッピーな日々』-当日パンフレットより-
3本立て公演唯一の新作です。他の2 作品は10 年以上前に自分で台本を書いていた頃の作品ですから、演出だけをやるようになって10 年以上経ったわけですね。あっという間でもありますが、そうでもない気もします。この10 年、色々ありましたね。今後も台本は書かずに演出家としてやっていこうとは思っています、その方が性にも合っていますし、時代や国が違う戯曲の方が、今、現代、現在を感じることができると思っているので。
”Are You Happy???” と銘打っている通り、3 作品を通して「幸せ」がテーマです。『Happy Days』を上演するためにそうしたわけではないのですが、実際この演目のタイトルも翻訳者の長島確さんと「しあわせな日々」か「ハッピーな日々」
かチラシを作るギリギリまで迷っていました。結果、この戯曲で描かれている「Happy」を、今、日本語に訳すならば「ハッピー」だろうということで、『ハッピーな日々』となりました。
ベケットの戯曲を演出するのは今回が初めてで、長島確さんにも色々お話を聞き、この作品もそうですが、ベケットの演劇との距離感、劇場で観客と俳優が対峙している状況を含めて戯曲を書いているところや、演劇の常識にいちいちツッ
コミをいれる感じにはとても共感を覚えます。ベケット戯曲は著作権管理上も戯曲に忠実に上演するよう指定されていますが、それがなくてもできるだけシンプルに上演した方がポテンシャルを発揮できる戯曲だと思います。今回の上演はシンプルな上演と言えるかどうかはわかりませんが、日本語に翻訳し現代の日本で上演することを考えて演出をしました。
個人的には2011 年以降は日本の抱える闇が明るみに出て、消えるどころか白昼堂々その闇が日本を包もうとしているように感じています。しかし、たかだか日本が抱える闇なんぞで、不幸になってたまるかとも思います。実際「ハッピーな日々」でググると、たくさんのブログ記事などが出てきます。みんなハッピーに暮らしているようです、幸せかどうかはわかりませんが。ハッピーハッピー言ってたら、気づいたら何かに埋まっていた、いや、むしろそれにすら気づかないのが、私たちの幸せなのかもしれません。本当に?
Are You Happy ?

作:サミュエル・ベケット 翻訳:長島 確
演出:多田淳之介
出演:佐山和泉 夏目慎也

photo by bozzo


舞台監督:熊木 進 海津 忠 舞台美術:山下昇平(『ハッピーな日々』) 照明:伊藤泰行 衣裳:原田つむぎ 演出助手:得地弘基 穐山奈未(青年団) フライヤーデザイン:細川浩伸 制作:服部悦子 
著作権代理:(株)フランス著作権事務所(『ハッピーな日々』) 企画製作:東京デスロック 一般社団法人unlock
協力:青年団 krei inc. (有)レトル シバイエンジン 急な坂スタジオ

助成:芸術文化振興基金 公益財団法人セゾン文化財団
主催:一般社団法人unlock 東京デスロック 共催:特定非営利活動法人STスポット横浜

フェスティバル/ トーキョー17 連携プログラム



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