Doosan Art Center+東京デスロック+第12言語演劇スタジオ『가모메 カルメギ』


Doosan Art Center+東京デスロック+第12言語演劇スタジオ
『가모메 カルメギ』

北九州公演 2014年11月22日(土)~23日(日) 北九州芸術劇場 小劇場
横浜公演  2014年11月27日(木)~30日(日) KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ

[当日パンフレットより]
韓国で初めて作品を作ったのが2008 年。第12 言語演劇スタジオとは2009 年以来コラボレーションを毎年続けています。今回の『가모메 カルメギ』は、私たちのこれまでの共同作業を見ていてくれたソウルのドゥサンアートセンターのプロデュースで昨年の2013 年にソウルで製作した作品です。残念ながら日本ではあまり報道されませんでしたが、今年1月には東亜日報の主宰する東亜演劇賞にて、作品賞、演出賞、視聴覚デザイン賞を受賞しました。外国人の演出家が演出賞を受賞するのは50 年の賞歴の中で初めてだそうで、韓国では授賞式の模様がニュースで流れました。日本人が日帝朝鮮を描いた作品を韓国内で演出することも今までほとんどなかったことです。正直大変でした。そもそも韓国人と仕事をするときは歴史の話はしない、というのが暗黙のルールです。もちろん、揉めるからです。しかし今回ばかりは俳優たちとも歴史の話をたくさんしました。去年も今年もしました。そして、いまだにお互いを理解し合うということはありません。しかし、人間同士の関係はお互いの違いを認めることからしか始まりません。日本人同士だからといって分かり合えるわけでもありませんし、わかったつもりになる方が問題です。隣の家の家族とだって食事のルールすら違うわけですから。人はみな違う、では私たちは、どこまでを同じだと思えるのか、ということをよく考えます。人間にはいろいろな境界線があります。国境と民族と宗教がその中でも最も強いものでしょう。例えば政治は、その国の幸福を目指すものですから、自国の利益を優先して当然です。しかし私たちには、他者にも自分と同じように大切なものや、感情を持っているということを想像する能力があります。その上で、相手を尊重するのか、無視するのか。今回の『가모메 カルメギ』を観て、もちろん韓国や日韓の歴史に興味を持ってもらえたら嬉しいですが、決して日本と韓国だけのことではなく、人間とは、他者とは、歴史とは何かということを考えるきっかけになってくれたら嬉しいです。日本公演実現に協力していただいた方々に心から感謝します。6 年前、ソウルの大学路でソン・ギウンさんと日韓の演劇の未来を作りましょうと約束しました。大切な友人たちと、これからも作品を、未来を作っていきたいと思います。
東京デスロック主宰 多田淳之介


アントン・チェーホフの戯曲を日本占領下の朝鮮を舞台に翻案する試みは、韓国演劇界でいくつかの前例があります。しかし、1930 年代の朝鮮を背景にした演劇を何篇か作ってきた私としては、たとえば<三姉妹>の有名な台詞、「モスクワへ!」を「京城( ソウル) へ!」に変えるだけではどこか物足りない物語になってしまうと感じました。朝鮮は日本の統治下に置かれていて、西洋の新しい近代の文物が日本というプリズムを通して入ってきていたという文脈を除くのであれば、チェーホフを当時の朝鮮半島に丸ごと移すことは難しいと思ったのです。 韓国の俳優と日本の俳優が一緒に登場し、朝鮮語(韓国語)と日本語とが混ざりこむ1930 年代朝鮮バージョンの『かもめ』を作りたいというこの一筋縄ではいかない夢は、去年ソウルでこの『가모메 カルメギ』という舞台で実現されました。それも私自身が演出するのではなく、日本人の演出家という他者の視線によって。私と長年のつきあいである演出家、多田淳之介は、まるで時代劇のように考証的で細かく詰め込んだ私の脚色戯曲『가모메 カルメギ』を現代化させ現前させる演出を施したのです。それから一年。私はこの演劇の世界が今私たちが生きている現在の世界と本当につながっているような気持ちに囚われています。日韓の関係が悪化、或いは後退しながら、また両国の政治がもたらす事柄を見守りながら、遠い昔を描いたこの芝居のある部分が、まるでデジャヴュのように感じられるようになったのです。もちろんその既視感がただの杞憂であり錯覚であることを願います。『かもめ』のトレープレフとニーナは、また『가모메 カルメギ』のリュ・ギヒョクとソン・スニムは、彼らの切実な夢を叶える事なく挫折してしまいます。チェーホフは常に人生を不幸に満ちたものとして描きます。しかし、この演劇で日本の観客の皆様との出会いまで待っている、夢を夢以上に叶えられている今の私は、ただただ幸せな限りです。今まで長い時間を共にしながら友情をはぐくんできた両国の俳優とスタッフ達が、日本の観客の皆様と二度と味わう事のできない幸せな現在をぜひ共有できる事を願っています。そしていつか私たちが不幸な過去ではなく、幸せな過去を舞台で分かち合える日が来ることを夢見るのです。
第12言語演劇スタジオ代表 ソン・ギウン


原作: アントン・チェーホフ「かもめ」
脚本・演出協力:ソン・ギウン
翻訳:石川樹里
ドラマトゥルク:イ・ホンイ
演出:多田淳之介

出演:夏目慎也 佐藤 誠 佐山和泉 間野律子
ソン・ヨジン イ・ユンジェ クォン・テッキ オ・ミンジョン マ・ドゥヨン チョン・スジ チェ・ソヨン イ・ガンウク

照明:岩城 保 舞台美術:パク・サンボン 舞台美術コーディネーター:濱崎賢二 舞台監督:浦本佳亮+至福団 音響:泉田雄太 衣裳:キム・ジヨン 小道具/メイク:チャン・ギョンスク 演出助手:アン・スファン ユン・ソンホ 通訳:イ・ジヨン カン・ユミ 宣伝美術:宇野モンド 制作:服部悦子 キム・ヨアン シン・ガウン(Doosan Art Center) 制作補佐:佐藤泰紀(急な坂スタジオ)[横浜公演] 制作協力:カン・ミンベク(第12言語演劇スタジオ)
企画製作:東京デスロック 一般社団法人unlock





撮影:石川夕子



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