『月と牛の耳』


渡辺源四郎商店合同公演『月と牛の耳』
2010年11月19日~23日 アトリエ・グリーンパーク[青森県青森市]
2010年12月3日~5日 キラリふじみ マルチホール[埼玉県富士見市]

「月と牛の耳」を書いたのは2001年のことです。
当時の私は「すべての物語は三題噺である」という理論から、三つのお題を先に掲げ、そこから物語を考え始めるということをやっていました。今回は「月」と「牛耳」と「大山倍達」。
ラテン語で月は「ルナ(luna)」。これを語源とする英語の「lunatic(ルナティック)」には「狂人」や「精神異常の」という意味があります。ヨーロッパの人々は月から発する霊気に当たると気が狂うと信じていました。日本語の「憑く」も月に由来するという説があります。
「牛耳る」は「牛耳を執る」から転じた故事成語で、ご存じの通り団体や集団の主導権をとることをいいます。
古代中国で諸侯が相会して盟約を結ぶ会盟のとき、盟主が牛の左耳を執ってこれを裂き、諸侯はその血をすすり合いました。
大山倍達(1923 ー1994) は空手家で、極真会館の創始者です。ゴッドハンド。牛殺し。「空手バカ一代」という漫画があり、TVアニメや映画にもなりました。佐竹雅昭、前田日明、佐山サトルなど多く格闘家がこの漫画の洗礼を受けて空手を始め、当時中学生だった私も危なく空手を始めるところでした。
かくしてできあがったのが、面倒な脳の病気に冒された大山倍達が、突然現れた娘の男と家族の主導権を争う物語です。
9年も前のホンなので若書き全開でこっぱずかしいのですが、多田氏にすべて任せたいと思っています。多田氏なら間違いありません。
なんたってプロレス好きに悪い人がいるはずはないのです。
渡辺源四郎商店店主 畑澤聖悟


実は東京デスロックという劇団名は、プロレス技の名前が由来です。
渡辺源四郎商店プロデューサーであり、東京デスロックの俳優でもある佐藤誠から「聖悟さんとは気が合うと思うよ、プロレス好きだし」と言われたのは何年前だったろうか、その後何度もなべげんの舞台を観ては、プロレスネタをちょいちょい挟んでくるところはもちろん、その巧みな戯曲と魅力的な俳優達に感動し、すっかりなべげんファンになっていました。実は初めて演劇を観て泣いたのもなべげんの舞台でした。
聞けばなべげんのメンバー達はアトリエを自分達の手で作り、仕事を持ちながら時間を捻出し活動しているという。
そんな演劇LOVE な彼らの、演劇人の聖地とも言うべきアトリエ・グリーンパークに初めて巡礼に参じたのが2008 年、想像通り演劇への愛に溢れた空間でした。昨年はアトリエで東京デスロックの公演、なべげんメンバーとのワークショップもさせて頂き、意気投合してのこの合同公演、先月末に青森公演を終えて、ついに我々の演劇LOVE ホーム、キラリ☆ふじみでの公演です。
今回聖悟さんが用意してくれたのは、かの大山倍達をモデルにした、まさに我々がやるにふさわしい戯曲です。
愛する畑澤戯曲、なべげん俳優陣、そして東京デスロックの良いとこ取りを目指しました。
この作品は、単なるプロレス好き同士の戯れではなく、演劇への愛で結ばれた我々の、初めての愛の共同作業の産物です。
観た方の心の中ですくすくと育ってくれる事を切に願います。
演劇への愛と、プロレスへの愛も込めてお届けします。演劇LOVE、プロレスLOVE、なべげんLOVE。
東京デスロック主宰 多田淳之介
(富士見公演 当日パンフレットより)



作:畑澤聖悟(渡辺源四郎商店) 演出:多田淳之介
出演:工藤由佳子 工藤静香 三上晴佳 工藤良平 柿崎彩香 宮越昭司 牧野慶一 畑澤聖悟 (以上 渡辺源四郎商店)
夏目慎也 佐山和泉 佐藤誠 間野律子 (以上 東京デスロック) 石橋亜希子(青年団)

照明:岩城保 音響:泉田雄太 舞台美術:山下昇平 演出助手:橋本清 ドラマターグ:工藤千夏 宣伝美術:宇野モンド 制作:服部悦子 西後知春 プロデュース:佐藤誠 




撮影:山下昇平



PAGE TOP ↑