東京公演再開について

東京デスロックは、2009 年1月上演の『その人を知らず』をもって東京公演を休止していましたが、2013 年1月の『東京ノート』(会場:こまばアゴラ劇場)より東京公演を再開します。
東京公演を休止した主な理由は、演劇関係者や演劇ファンの文脈の中での活動に没するよりも、まだ演劇に出会っていない人との出会いや、地域の中で芸術を身近に感じられる活動に参加したい、そして観客もそういった地域での活動に目を向けて欲しいというものでした。
休止後の4年間の活動は想像していたより遥かに充実したものになりました。
当初劇団の存続すら危惧されていましたが、東京休止後の方が一作品の公演回数、公演会場、観客数も増え、小学生から高齢者まで多くの観客に出会い、私たちの作品を観るために東京から富士見や横浜、時には青森や九州まで足を運び、その地域での活動を見てくれる観客も増えました。
何より、各地域の志ある人々と活動を共にする機会を得たことはかけがえの無い財産になりました。
もちろん地域での活動を達成したということではありません。今後も様々な地域での活動は続けていきますし、東京の舞台芸術関係者や観客も、日本で起きていることにもっと興味を持つべきだと思います。
「東京の人だけは他の地域に観に行かない」と言われているままで良いとは思いません。
現に今の日本の舞台芸術の中で東京はかなり遅れています。
ここ数年で日本の地域演劇は大きく進みました。優秀な人材も育ち、創造環境も整備され、今や才能のあるアーティストは20 代から東京以外の様々な地域で活動するようになりました。
結果、質の高い作品も多く生まれ、それは今後も間違いなく増え続けるでしょう。
ここ最近では公共、民間問わず地域同士の繋がりも生まれ、現在はそこから新しい日本の演劇のありかたが、東京を介さずして生まれています。そして東京のアーティストはその中にどんどん入っていくことができます。
それが今後どういう事になるのか想像するのは容易いでしょう。東京マジでヤバいです。
かつて私たちは、東京で地域の活動は不可能だと考えていました。それは現在でも変わらないかもしれません。
この4年間で、私たちの地域への考え方、取り組み方も色々な体験の中で変容し続けています。
そしてなによりもこの1 年で東京も国内でもかなり特殊な地域性を持つ場所になりました。
今後生活しやすくなる可能性が無い場所で、首都としての機能も維持していかなくてはいけません。
その中で更に人間は人間に弱くなり、東京を離れる人も増えていくでしょう。
かつての東京は芸術を必要としない地域でした、現在は国内で最も芸術を必要とする地域の一つになりました。
地域での活動で得たものは、地域=人と向き合うことかもしれません。
2011 年度より「地域密着、拠点日本」をテーマに活動をしています。
他の地域と同じように、東京という地域に向き合うことも、もはや吝かではありません。
私たちも変わりましたし、東京も変わりました。
東京公演を休止することは未来を見に行くことでした。東京公演再開も未来を見に行くつもりです。
どんな未来でも向き合っていこうと思います。
今後とも東京デスロックをよろしくお願い致します。
2012 年3 月24 日
東京デスロック主宰 多田淳之介




PAGE TOP ↑